述語

主語は俳優の廣瀬大介さんです

SMILE FANTASY!

SMILE FANTASY! 10/12 18:30~

いつもの主語とは違いますが、SMILE FANTASY!はスマイレージというアイドルグループの既存曲を使った、スマイレージ主演のミュージカルです。
1回じゃ見足りなかった。
きっとたくさんの方が考察などしていらっしゃって、公式からも色んなコメントやヒントが出てると思いますが、それをあまりチェックできていなくて、どうも口幅ったいのですが…、あまりに感激したので記事を書きます…。文中で出演者を愛称で呼びますが、失礼します。

誰に見せるために?

演劇の内容に説得力を持たせるためには、普通、脚本を裏設定まで詰める、立派なセットを用意する、プロの俳優にプロの演技をしてもらう、等々っていうアプローチをします。時間も資金も有限である中で、どうやってその説得リソースを揃えるかが、演劇を作る側の最大にして唯一の課題だと理解してます。
SMILE FANTASY!の舞台セットは1つだけ(これがどピンクで、細部まで気が利いててすごく可愛いのですが)で、演者は稽古時間を確保するのも一苦労の年中スケジュールカツカツアイドルちゃん。
今回は説得リソースとして「ベニヤ板と大道具さんの労力、それの対価」「ベテラン俳優の迫真の演技、それの対価」に頼るのではなく、「スマイレージの既存曲、MV、これまでのコンサート、それを何度も観てきた私(ファン)の時間、そうやって自分の中に育てた曲の世界観」が、利用されているのです。
例えば今回使われている曲のひとつ、『ぁまのじゃく』のイントロが流れれば、私の脳内では勝手に『ぁまのじゃく』のMVが再生されて、目の前は学校の下駄箱の風景になる。歌詞に出てくる人物の心情は、何年もかけてCDで、DVDで、コンサートで曲を聴いて、自分の中に出来上がってる。

だから、舞台のセットはどピンクの女の子の部屋のままでも、何の説明もなく突然「斉藤
先輩」なる人物が登場しても、『ぁまのじゃく』の場面はもの凄い説得力を持って私に迫ったのでした。
アイドルの既存曲でミュージカルをやるというのは、観る側のその曲への思い入れを舞台のリソースとして使ってしまう、ということなのか!と体感して、目から鱗でした。泣かせにきてるフィナーレ曲だけでなく、可愛くて切ない恋のエピソードでも、会場ではすすり泣きの声がよく聞こえましたが、自分の中だけにあると思っていた情景を、目の前でスマイレージ本人が演じているんだから、ファンはそりゃ泣くよね…。と思います。
『ステーシーズ』『我らジャンヌ』『LILIUM』と、ハロー!プロジェクトと組んだ作品を発表し続けてきた末満健一氏ですが、今回はちょっとアイドル舞台の新たな可能性を拓いたのではないかと思います。
ただ、自分の中にリソースを持ってない人(=スマイレージのファンじゃない人)が舞台を観ても、楽しめないんじゃないかというデメリットがあります。「ファン以外の人が見ても面白くないと思う」っていう意見を今回よく見るのはきっとそういう事で、面白くもない日替わりネタで萎えるとか、キャストが大根だとか、そういう問題ではないんだと思います。
そのデメリットはきっと供給側も理解していて、これまでの3作品のリピート率など考慮して、「ファン以外あんまり観に来ないんだからいいんじゃない?」っていう判断があったと私は想像しています。私が感激したのは、その「切り捨てる判断力」です。
ファン以外観ない、とか切り捨てる、なんて言うと印象が悪いかもしれませんが、公演パンフレットにもあるとおり、

スマイレージと、そしてスマイレージを応援し支え続けてきてくださった皆様のための作品です。

ということなんだと思います。
6人のスマイレージと、そのファンのために、こんなプレゼントを用意してくれたことに、私は感激したのです。
…なんかね、「スマイレージが好きすぎて曲が流れるだけでテンションあがる」っていう意味のことを遠回しにグシャグシャ書いてるだけじゃないか、と自分でも思います。

ピンクの仏像

スマイレージがライブ終了後、あやちょの家でパジャマパーティーをするという設定。群馬公演だったのでしょうか…。
パーティーの話題は、ツアーの反省からいつしか恋の話になる。「もしも私がアイドルじゃなかったら、こんな恋愛してた!」という妄想を6人がそれぞれに繰り広げるのですが、それが全てスマイレージ曲の歌詞をショートストーリー化したものなんです。(以下、この妄想シーンのことを歌詞SSと書きます。)
各人と曲はこんな感じ(演目順)。

分かる方には分かると思いますが、もー、絶妙ですよね…。この6曲のほかにも4曲の既存曲と、舞台オリジナル曲4曲を取り入れた、歌にあふれた作品でした。
スマイレージの曲を使ったミュージカル」という前情報で、それならきっとスマイレージには明るくてちょっと切ない恋の曲が多いから恋の話だろうな、既存曲を繋げて一貫したストーリーを作るのはちょっと難しいだろうからオムニバス的な感じになるのかな、という所までは私も想像していたのですが、SMILE FANTASY!はディティールが凄い。

  • 使われる曲は『チョトマテクダサイ!』がギャグとして使われる以外は全てフルサイズ。ハロー!プロジェクトでは今年、全曲フルサイズ披露のコンサートがありました。コンサート等で構成上、曲がカットされることはJ-POPには多いですが、フルサイズで聴くと編曲や歌詞の起伏がよく分かって、やはりいいものです。
  • つんく♂節全開な歌詞SSに対して、パジャマパーティーの場面は末満氏らしい雰囲気で、コントラストが良い。パジャマパーティー中、突然の雷雨で停電が起こり、それまで大騒ぎしていた女の子たちが暗闇の中で一つのベッドに寄り集まって、「このまま世界が終わったらどうする?」なんてささやき合うんですよ。
  • 歌詞SSに登場する相手役の男の子も、メンバーが演じる。出てくるだけでふふっと笑顔になる、楽しい演出だったと思います。
  • 歌詞SS中に「みんな何やってるの?」「福田さんもノってくださいよ~」のようなやりとりがあり、パジャマパーティー中の彼女たちにとってもこれは「劇」なんだとわかる。
  • でも、歌詞SS世界の天気予報がパジャマパーティー世界での天気とリンクしていて、二つの世界は同程度には現実らしい。

もうひとりの自分と出会う冒険。 アヤカ、カノン、カナ、アカリ、リナ、メイミ6人の少女たち。アイドルとして人生を送る彼女たちは、ある日、不思議な世界へと足を踏み入れる。 そこは、もしも彼女たちがアイドルになっていなかったら生きたであろう「もうひとつの人生」。彼女たちは if世界で、自分ではない自分の人生を生きることとなる。

http://gekipro.com/Gekipro/stage/2014/0/smileaes-jukebox-musical-smile-fantasy.html

「自分」と「自分ではない自分」のリアルさは同じくらい。

  • でも、テーマ曲の『抒情組曲「スマイルファンタジー」』で歌われるとおり、“君の笑顔はリアルを超えてファンタジー”なのです。メッセージ性がありすぎて…。

ゆっくりおやすみ

SMILE FANTASY!で前面に提示されていたテーマ、それはこの舞台のラストナンバー、『抒情組曲「スマイルファンタジー」』のフレーズでもある「出会ってくれてありがとう」です。この曲は劇中で「スマイレージの架空の新曲」として登場します。
スマイレージは来年からの増員・改名を発表されています。スマイレージは今までに一度メンバーの増員を行っていますが、それは脱退による減員に伴っての事でした。今回は、現在のメンバーがいつか卒業した後も、グループを継続するための増員、とアナウンスされています。スマイレージは、卒業と加入を繰り返してグループ名を継続させるグループになる、と言われているのだと感じました。
公演パンフレットや脚演末満氏のtwitterを見ると、SMILE FANTASY!の製作過程で増員と改名は意識されていなかったのかな?と思います。
「出会ってくれてありがとう」この言葉を紡ぐためのラストナンバーの前に、舞台では朝が訪れてパジャマパーティーは終わり、スマイレージはまたステージに向かうために退場します。そこにスクリーンが降りてきて、映し出されるのは数年前のコンサート映像。そこに映る彼女たちは、今見るととても幼く、頼りなく感じる。その映像の間に挟まれる「楽しいことばかりじゃなかったけれど」「今までありがとう」といった文章。ここは明らかに増員と改名発表後というタイミングを意識していると感じました。私はこの演出、ちょっと好きになれなかったのですが(なんだかアニメのエンディングに実写映像を使うような、突き放され感があったので…)、なんというか必死さも感じて、増員と改名を知ってから付け足したものだったのかもしれないな、と思っています。
しかしこの舞台、そもそも冒頭から「めいめいが公演中に過呼吸になって…」という実際にあったエピソードで始まるので、とても現実と虚構がないまぜな代物です。アイドルという存在自体が現実と虚構の境界にいる存在なので、そこに演劇と現実という対立項や、演劇と演劇内演劇っていう対立項も入って来て、どんどんスマイレージの輪郭が柔らかくなっていく感覚は楽しかった。
「もうひとりの自分」「Jukebox」等のタームでスマイレージの幻想の世界を描こうとしたプロデューサーと、スマイレージを現実に返して、スマイレージが見ている「君の笑顔」こそがファンタジーだ、と提言した演出家の、しのぎの削りあいでしょうか。
増員が決定して、メンバーも、スタッフも、ファンも、本当に多くの想いを抱えていると思うのですが、十分に思慮深くある限り、言葉にできる想いは確かに「出会ってくれてありがとう」。それくらいしか言えない。このフレーズは主語と目的語がないのがうまいですね。1期メンバーと2期メンバーが「出会ってくれてありがとう」。スマイレージとファンが「出会ってくれてありがとう」。

君の笑顔はファンタジー

改名後のグループ名は公募中ですが、本当に「スマイルファンタジー」に決定したら、ちょっとでき過ぎだけど、そんなでき過ぎは、悪くないですね。